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Summer Santa Claus
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  2001年 7月のゆんちゃんみなちゃん
ゆんちゃん13才 みなちゃん10才
 
  いぢわる
   

 その日、わたしが家に戻ると、みなちゃんはもう学校から帰っていました。玄関にカバンは放り出したまんま、『おかえりなさい』もありません。とにかく機嫌が悪い。大きな音でテレビをつけて、リビングで黙々とお菓子を食べています。テーブルの上にはお菓子の空き袋が山のよう。マドレーヌ、ポップコーン、おせんべ・・・、みんなで食べようと買っておいた洋菓子までありません。
  「みなちゃん、ただいま」
わたしが声をかけても、返事もしません。
「みなちゃん、お菓子全部食べちゃったの?ほかの人の分は?」
返事がありません。
結局わたしは、みなちゃんを自分の部屋に連れて行って、お小言を言うことになりました。
ところが、部屋に入るとみなちゃんは、いつになくシュンとしています。わたしが何を言ってもうなだれたまんまです。それからポツポツと話し始めました。
  みなちゃんは、お友だちに小さなイヂワルをしたのです。うつむいたまま、その日あった出来事を話してくれました。
ひとしきり、話し合ったあと、それにしてもどうして、あんなに食べてたの?と、聞いたわたしに、みなちゃんはこう言いました。 
「・・・忘れようと思ったから」
わたしは、びっくりしました。
「忘れられたの?」
  ううん、と首を横に振って、それからみなちゃんは、突然何かの糸がちょん切れたみたいにワーンと泣き出しました。小さな子が泣くみたいに口を顔いっぱいに開いて、涙をボロボロこぼして、本当にわんわんと、声に出して泣きました。
「それは、みなちゃんが忘れちゃいけないことなんだよ」
わたしのことばにうん、うんと頷いて、明日あやまると言いながら、それでもわんわんと泣き続けました。
わたしは、わが娘がしてしまったことに腹を立てつつ、相手のお友だちに申し訳なかったと思いつつ・・・、その一方で、みなちゃんを抱きしめて、泣いてしまいたいような気持ちになりました。