洗面所で顔を洗っていたら、みなちゃんが来ました。
「ママ、肩が並んでる。同じくらい！」
まだ、抜かれるとまではいきませんが、確かにみなちゃんはスラスラ、すくすく育っている。
　 朝ごはんを作っていると、ヌボーっとゆんちゃんが起きてきました。だいたい、ヌボーっと起きてきた朝は、ズンと背が伸びて感じます。窓に映る姿を見て、「オッ！」二人で声出して、思わず背筋を伸ばしてしまう日も増えてきました。いよいよ、迫ってきましたよ。
　 つい最近までは、まだまだ、負けるわけにはいきません、と思っていましたが、今はその日がくるのが楽しみでもあります。ゆんちゃんもみなちゃんも、体ばかりか、心もずいぶん大きくなって、わたしを助けてくれるようになったから。
　 この夏、少し考えることがあって、ためいきの数が増えたわたくしですが、
「ママ、ためいきはつかない方がいい。幸せが逃げるから」
と、教えてくれたのは、みなちゃんです。鼻の穴を広げて、口をキュッと結ぶと、
「フンッ！」
音をたてて、おもいっきり、鼻から息を噴き出してみせます。
「この方がずっと、スッキリするよ。あっ、でも、ハナミズ出てるときはしないほうがいい」
Tシャツのそでで、ハナミズを拭ってます。
　 おこづかいあげるから、とゆんちゃんに引き出しのお掃除を頼むと、
「去年してあげたでしょ。きれいに使えば、むだにお金使わなくて済むんだよ」
ゆんちゃんにも諭されました。ふう。
　 みなちゃんが常々教えてくれるのは、後まわし、の発想です。
「テストを受けたあと、点数とれなかったらどうしようと悩むのは間違いです。万が一、できてたときに損するからです。テストが戻ってきてから考えましょう」
すっごい説得力です。
こんなことも教えてくれました。
「おリンゴのことで悩んでいるときは、おリンゴのことをよく観察しなさい。おリンゴをよーく見て、ちょっと触ってみたりして。あっ、でも、齧ってはいけません。歯ぐきから血がでるからです」
わかったような、わからんような、・・・でも、ゆんちゃんもみなちゃんも、着々と自分の人生を歩み始めているのは確かな様子。
母ばかりが、背中が丸まってきている気がします。こりゃ、もうすぐ、抜かれるな。