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おこりんぼママ
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ユッタ・バウアー 作
橋本香折 訳
 

◆三児の母
男の子ばっかり三人のおかあさんをしている友人がいます。

高校生、次に中学生、三番目がユッキイです。

このユッキイはどこから見ても女の子のように愛らしい。大きな目をクリクリと回し、肩より長い髪をヒラヒラと風になびかせ、今日もキコキコと三輪車をこぎ続けます。そう、ユッキイは今2才。その愛くるしい容姿をヨソに、なんとも男気のあるカッコイイ奴なんです。

◆怪獣ユッキイ
ある晩、わたしが彼女の家でご馳走になっていると、ユッキイはうれしさに、食卓のイスの上に立ち上がって、ガオーっと雄たけびを上げました。

ユッキイは時々猛獣に変身するのです。ゴリラのように胸をたたいて吠え続けます。

ご飯なんかそっちのけ。にいちゃんが繰り出す『からかいパンチ』に反撃しながら、唄ったり、踊ったり、吠え続けていたユッキイですが、最後はイスの上に立ち尽くしたまんまビービーと泣き出しました。

にいちゃんからは「うるさーい」と、『からかいパンチ』の嵐。

ユッキイはビービーがワアワアに変わり泣き続ける。

◆母の一声
男児三人の食卓っていうのは、こうもにぎやかなものなのでしょうか。
あーあ、こうなっちゃうと誰も止められない、と箸持ったまんま傍観していたわたしですが、彼らのおかあさんは、静かにこう言いました。

「ユッキイ、そんなに泣くとお外だよ。ユッキイかわいいから誰かがすーぐ、拾ってくれるよ。」

すると、ユッキイはピタっと泣き止み、イスに座りなおして納豆ご飯をかき込み始めたではありませんか。

◆お試しあれ!
わたしはかつて、こんなチャーミングな叱り文句を聞いたことがありません。しかも、とっても怖いでしょ?!

闇の中に放り出されて、どこの誰ともわからぬ者に手を引かれていく様は、北欧あたりの昔ばなしのようで、ちょっと想像してしまいます。

◆おこりんぼママ
こちらは、おかあさんにオモイッキリ怒鳴られちゃったペンギンくんのおはなし。

おかあさんの怒鳴り声がすごくって、「ぼく」の体はバラバラ。世界中に飛んでいってしまいます。

このコワーイはずのおはなしが、とってもユーモラスに映るのは、もちろん、ユッタ・バウアーの絵が楽しいからに違いありません。

そして、もうひとつ!
どの家の子どもたちもちゃんと知ってる。

『ママはほんとはぼくのことが大好きなんだ』って。
(2002年9月掲載)


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