◆職人さんのように!!
なんとも味わい深い絵本です。
大人が大人の楽しみとして、じっくり絵の中に浸ってしまいたいと感じる絵本です。
〜木版画で色がついている部分をつくり、えんぴつで細部を描き込んで、完成させる(本書カバーより抜粋)という手法〜で描かれています。
『丹精』ということばがピッタリ、ちょっと感動しますよ。
◆エイモスさんの優しさ。動物たちの優しさ。
主人公のエイモスさんは動物園で働いています。
時間を作っておともだちのところへ行きます。
考えてばかりのゾウとチェスをして、ゆったりカメとかけっこ、はずかしがりやのペンギンの横に座り、鼻の出ているサイにハンカチを差し出します。
暗いのが怖いミミズクには本を読んでやります。
ある日、エイモスさんが風邪をひいて動物園をおやすみします。
午後になると動物園のおともだちはエイモスさんに会いにいきます。
彼らは寡黙です。寡黙にバスを待ち、寡黙にバスに揺られ、寡黙にエイモスさんに寄り添います。
けれどそこに溢れんばかりの優しさと愛情と高揚を感じます。
◆寄り添う、っていうのは・・・、
絵と文がひとつになって静かなときを作りあげています。
寄り添うことや、ただそこに(横に)いてあげることの意味を教えてくれます。
細部に至るまで精密にしっかりデッサンされた絵ではあるのですが、その一方で動物たちの表情はとてもユーモラスで愛情に満ちています。
どのページにも(おまけのように)ねずみと小鳥が描かれていて、彼らがもうひとつの物語を語っています。
探してみてね。
◆アナーバーという小さな町で。
文のフィリップ・C・ステッドは絵本作家(邦訳はない)、妻であるエリン・E・ステッドは本書がデビュー作。
すごいなあ。
これが初めての絵本って…。ほかの作品もぜひ見てみたいです。
二人はニューヨークとミシガン州のアナーバーを行ったりきたり…とあります。
昔アナーバーは何度か訪れたことがあります。
近くの町に住んでいたことがあるのです。
なんとも静かで美しい田舎町です。…懐かしい。
だからこの静かな物語がそこで生まれたのかもしれないと思うだけで…うれしいのです。
(2011年11月掲載)