◆しだれ桜の咲くころに
大胆でいて、夏のお日さまみたい、というのが、わたしの中にある木葉井悦子さんの絵本のイメージです。
でも、この絵本は、淡くて、繊細で、優しくて…。
だからこそ、別の力強さで心に迫ってきます。
木葉井悦子さんは、この世にもういらっしゃいません。
この本は20年ぶりに復刊された絵本です。
しだれ桜の咲くころ読んでみてください。
◆老いること 死んでいくこと
ブラリと立ち寄ったトムズボックス(吉祥寺の絵本専門店)で、この絵本を手にとったとき、そのまんま動けなくなってしまいました。
なんだか、泣きたくなってしまった。
人が老いるというのは、どういうことかしら?
死んでいくというのは、どういうことかしら?
「じいさま、きょうのことは、ずーっと前からきまっていました」
「お迎え」にきたひいらぎ少年を、ぼんさいじいさまは素直に迎え入れます。
すぐに迎え入れることができるのは、常にまっすぐ死と向き合っているということですね。
ひいらぎ少年と歩いていくぼんさいじいさまは、土に返るというよりは、自然に溶け込んでいくように見えました。
せつなくって、けれど、温かい風景がそこにあります。
◆◆日々を生きる◆◆
知り合いのおばあちゃんが、あるときわたしに教えてくれました。
「あたしゃね、あと、やっとくことが三つあるからね」
そう言って、お墓の整理、住んでいる家の整理、 実家に預けてあるものの整理、この三つをあげてくれました。
それから、おばあちゃんはサラリと、こう続けたのです。
「最近ボケてきたからね、紙に書いて、鏡の前に貼ってあるの」
確かに貼ってありました。スゴイ!
お迎えがくる前にやっとこうかなって思うことがあって、いつも目の前にかかげてる。
『日々を生きてる』っていう感じが、切々と伝わってくるじゃありませんか。
わたしなんて、老いてく自分にジタバタ抵抗してばかり。
ときを重ねれば、おばあちゃまみたいになれるのかしら。
フト、考えてしまいました。
(2004年10月掲載)