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ミトン

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河出書房新社
ジャンナ・ジー・ヴィッテンゾン さく
レオにード・シュワルツマン え
はっとり みすず ほんあん


◆ミトン、なんだかとても懐かしい響きです
親指だけが分かれている手袋のことを、今でも「ミトン」と呼ぶのかしら?
 
記憶の糸をたぐり寄せると、毛糸でフカフカと編まれた小さなミトンを、幼かったわたしは持っていたように思うのです。

仲良く寄り添う四本の指をミトンの中でモソモソと動かし、まるで小さな動物のように動くその手袋を、スリスリと頬にすり寄せた感覚を、今でも微かに思い起こすことができるから。

ミトンは片方が迷子になってしまわぬように、しっかりと毛糸のひもでつながっていて、そのひもはいつもオーバーコートの衿の中に収まっていました。

「ミトン」という響きそのものが、幼いわたしには新しく、どこか大人びた気分になったことも思い出します。

小さな子どもが五本指の手袋をはめるのは、なかなか大変なことですからね。

あら、小指さんと薬指さんがおんなじところに入っちゃった、なんてね。

そこで、ミトンの登場となるわけです。すっぽりはめて、それからオーバーコートを着せられて(ひもはキュッキュとコートの衿に押し込んでもらって)、玄関に座って靴をはかせてもらう。

「おでかけ」という、これまた特別なことばと一緒に電車に揺られます。
デパートの屋上で大好きな乗り物にのっけてもらって、何かとってもおいしいものを食べる。フォークとスプンを使って。

デパートの紙包みを抱え、帰りの電車に揺られ包装紙のにおいをクンクン嗅ぐ(包装紙のにおいが大好きでした!)。

紙包みを抱えるミトンの中の四本指は、しあわせ一杯にモソモソと動き回って、その小さな動物は、わたしの膝の上を自由に飛び跳ねたり、ほっぺたに擦り寄ってきたりしたものです。        

記憶の糸はたぐり寄せられるままに、どこまでもスルスルと伸び続け、あのころのくすぐったさや、においまで、わたしの元に呼び寄せたのでした。
 

◆懐かしい響き『ミトン』
『ミトン』という名の、まだ出会ったことのないはずのこの絵本に、どうしようもない懐かしさを覚えたのは、この小さな絵本が、わたしの奥底で眠り続けていた小さな記憶を呼び覚ましてくれたからに違いありません。

アーニャの赤いミトンが、仔犬となって動き出し、アーニャと一緒に遊び始めるその様は、わたし自身の持つ経験にほかならないのです。

ときに絵本は、決して目覚めることのなかったはずの、遠い記憶の道しるべにもなりえるのです。
(2003年12月掲載)


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