◆ロシアのわらべうたに込められた想い・・・絵
ロシアのわらべうたを集めた絵本です。
本棚に忍ばせておいて、ときどき眺めるだけでうれしくなるような本です。
絵は『原爆の図』で有名な丸木俊さん。
各ページに散りばめられた絵は、日本という風土を超え、遠い異国の懐かしさを見事に表現してくれています。
丸木俊さんはモスクワに長く滞在されていたことがあるのですね。
◆ロシアのわらべうたに込められた想い・・・ことば
「あとがき」にあたる『おかあさまがたへ』もとてもステキ。
内田莉莎子さんが、ロシアのわらべうたに対する真摯な想いを、なんとも暖かく綴っていらっしゃいます。
そして、それを飾る丸木俊さんのイラストが頁毎に三色で刷られていてとてもかわいいのです。
この本は、1969年にさ・え・ら書房から出版されたものの復刻版です。
◆お気に入りの詩
わたしのお気に入りは、「ねんねの じかんよ」。
出版記念の原画展をポポタムさん(目白のギャラリーさんです)で、見たときに、「わたしの みいや」で始まるこの詩に釘付けになりました。
「わたし自身のかわいい娘みい」の唄に違いないと、一緒にでかけた主人と頷きあったのでした。
◆◆わたしがとてもとても小さかったころの話・・・◆◆
ある日、母は幼いわたしにこう言いました。
「遠いお国からお船に乗って、おじちゃまが帰ってきますよ。しばらく、うちにいらっしゃるからね」
それから数日して、おじちゃまよりひと足早くわが家に届いたのは、それは立派な!おじちゃまが使っていたというお机でした。
『お舟はどうして沈まなかったの?』わたしは目をまん丸くして母に聞きました。
それから、こうも聞きました。『今日からこのベッドに寝てもいい?』
そして、それはその通りになりました。
部屋の半分を占める木製の重たいお机が、おフトンを敷く場所をも占拠してしまったからでした。
さて、そのお机には大きな引き出しが両端に三つ。キィキィと軋ませながら、母が開けてくれたその引き出しからは、飾りのついた短剣が一本、木製の小さな樽の中からはツメ先ほどのサイコロもいくつか現れました。
忘れ物のようにひっそりと収まって。
見たことのない遠いお国の空気を、そのままに詰め込んで。
さてその後、何ヶ月かの航海を経て、わが家に辿り着いたおじちゃまは、これまた遠いお国のにおいをプンプンと振りまいておりました。
鼻の下にはたっぷりとおヒゲを蓄え、小さなたて笛をいつも胸ポケットに忍ばせて。
ところ構わず笛を吹いて、呪文でも唱えるように唄を歌ったりもするのです。
幼いわたしにとって、遠いお国もこのおじちゃまも、不思議で怖くて、決してひとりで近づいてはいけないぞ、という存在ではありましたが、その一方で、そっと覗きこんでみたい場所でもありました。
おじちゃまのくれるチョコレートのパッケージやアメちゃんの包み紙からも、初めての出合いでありながら、なにか懐かしさを感じたのでした。
その懐かしさっていったい何かしら?
今でもヨーロッパの古い「子ども用のさし絵」や「わらべうた」にはとても懐かしいものを感じます。
触れたこともないはずなのに。
残酷で暖かくてユーモラス…。
それは、子どもが心の奥底に、生まれついて持っている魂…、そのものなのかもしれません。
(2007年11月掲載)
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