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父さんの小さかったとき

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福音館書店
塩野米松 ぶん
松岡達英 え
 

  
◆昭和の子どもたち
懐かしい昭和の子どもたちの暮らしが存分に詰まっている絵本です。
けれど、昔の生活や遊びに出会えるばかりではありません。
そこには生き生きとした、子どもたちそのものが描かれています。
今と少しも変わらない子どもの姿。
生活は変わっても、子どもはなんにも変わっていない、と感じます。

◆温かな線
たくさんの図鑑も描いていらっしゃる松岡達英さん。
とても、精巧で写実的であるのに、その線からは、優しさが伝わってきます。
いい絵というのはそういうものなのでしょう。
無意識に自分自身が顔をのぞかせてしまうのです。

◆◆あぐら◆◆
父があぐらをかくと、わたしは決まってそのひざの中に座りこみました。
新聞を広げる父のひざ、晩酌をする父のひざ。
まるで、自分の定位置であるかのように、すっぽりとそこに収まっていました。
食卓のイスの上でもあぐらをかく父でした。
わたしはテーブルの隙間からどっこいしょと這い上がって、よいこらしょと父のあぐらの上に収まります。
お客さんがいてもおかまいなし。
父もそれを拒むふうもなく、わたしは自分の席に納まって、酒の肴のウニつまんだり、イクラつついたりするのが習慣でした。
根っからの、飲んべえ親子だったのですね。
 
お正月には父の兄弟が集まりました。
飲んべえの兄弟はやっぱり飲んべえ、大酒飲みが四人も五人も集まって、それこそ飲めや唄えの大騒ぎ。
ここでもわたしは父のあぐらの上で、うわばみたちの飲みっぷり、しゃべりっぷりに聞き入ったものです。
そのうちに順番に唄い始める。
昔はカラオケなんて使わず、手拍子だけで、よく唄ったものです。      

父の十八番は『琵琶湖就航の唄』と『知床慕情』、ちっとも上手くないんだけれど、途中で説明が入ったり、合いの手が入ったり、味のある、いい唄でした。
この歌を聴くと今も泣いちゃう。

わたしはその唄を何十回となく、父のあぐらの中で聴きました。
父が揺れればわたしも揺れる。
父が笑えばわたしの背中も笑う。
体全体で唄を話を聴いていたように思います。

父が亡くなって八年、でも今も、父の声や、話すリズムをすぐに思い浮かべることができます。
あぐらの上に収まって、体に染み込ませるようにして、その声を聞いていたからかもしれません。
 
さて、そんなにも好きだった父の子ども時代をわたしは知りません。
なんだか怖くて聞けなかった。
いなかのお百姓家の男ばかりの六人兄弟。
貧しい時代や戦時中の話を、わたしが拒絶していたのです。
苦労話ばかりでなく、ワクワクの詰まった少年時代の出来事もたくさん披露してもらえたでしょうに。

今となっては、もう、聞くすべもありません。
(2005年7月掲載)

 

 

 

 

 

 



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