◆擬音だけで語られる絵本 景色だけで語られる絵本
電車好きにはたまらない、電車の擬音だけで語られている絵本です。
絵は電車の運転席越しに見る外の景色のみ!
けれど、電車で揺られてのお出かけのうれしい気分、
車窓から見る街の人々の営みやら、
いろんなドラマが心をよぎります。
◆誰か読んでぇ!
こういう本はうまく読めなくってもいいんじゃないかな。
ああ、読めない!誰か代わって!なんていいながら思いっきり楽しんで!
皆が声に出してみたくなる絵本なのです。
きっと、どのクラスにもひとりくらい、とびっきり上手に読める男の子がいたりするんだよ。
◆◆電車でおでかけ◆◆
小学生のわたしは、よく倒れる子どもでした。
朝礼ではしゃがみこむ、給食のカレーうどんのにおいだけで気分が悪くなる。
保健室の女王様みたいなもんでした。
ある日、母とふたり電車に乗ってお出かけしました。
けれど、その日の電車の混みようといったら。
駅毎に人が増えて、わたしの目の前には、すんごいおばさんの、すんごいおしり。
案の定わたしは気分が悪くなりました。
降りたい、と言うと、母はだめ、といいます。
外の景色を見て!深呼吸なさい!
でも、満員となった電車からは、横目にかすかな景色が見えるだけ。
降りる!降りません!
それで、わたしはひたすらゴクゴク生唾飲込んで、駅くるかな、駅くるかな。
すんごいおしりにほっぺたくっつけたまま、耳をそば立てたのです。
ガダゴドガダゴド…ゆっくりになると、駅に着きます。
あといくつ?あとふたつだから。ッドンッドンッ…。
あといくつ?次よつぎ!
ガッタゴットッガッタッゴッドガダゴドンガコン…シューッ。
やがて、片目で見る窓の外に、かすかに駅のホームが見えました。
あ、人がいる。そう思ったとたん、見事に世界がまっ白に。
音が聞こえなくなり、景色がスッと遠のきました。
どんなふうに担ぎ出されたのか覚えていません。
それっきり、わたしはお出かけが嫌いになって、母もわたしとのお出かけが嫌いになったのでした。
たぶん。
(2005年11月掲載)
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