◆手が作り出す何かが飛び出す絵本
みかんの人形、ハンカチねずみ…、
懐かしいモノたちが、ページをめくる度に手の中から飛び出してきます。
それも、『物』としてではなく、『ぬくもり』として。
◆手にとって読んでみて
たいへんに地味な絵本です。
こういう絵本をお勧めしたいのだけれど、
こういう絵本を手にとってもらうのは、実はなかなか難しいかもしれません。
でも、一度存在に気づくと、冬が来るたび手にしたくなる絵本であると思います。
◆お話会で読んだら…
おとうさんたちが惹きこまれるようにみつめていました。
読み終えると、我が子に『手で作るカエル』を作って見せていた。
きっと、おうちでも作ってあげるのだろうな、とうれしくなりました。
◆保育園で読んだら…
「そうねえ、懐かしいわねえ」
「手袋うさぎつくったわよねぇ」
ページをくる度、保育士さんの方が声をあげていました。
うるさいよ、と笑っちゃうくらい。
そのあとで、子どもたちに早速ハンカチねずみさんを作ってあげていました。
ねずみ作りながら子どもたちにいろいろ語りかけている保育士さんの姿が印象的でした。
◆◆子どものころの冬っていったら◆◆
今よりずっとずっと寒かったと思います。
学校に行く前には、よし!って覚悟決めてランドセルを背負っていたな。
ハイソックスにジャンバー、マフラーして手袋はめて。
それでも、当時流行っていたおしりの見えそうなミニスカートはかかさずに。
毛糸のパンツは履かないと母親に怒られるから、玄関の隅でコッソリ脱いで「いってきまーす」と出かけてました。フフ。
でもね、だからこそ、学校でストーブにひっつくほど手をかざして暖まったことや、家に帰って、コタツに潜りこんで食べるおミカンがお日さま色だったっていうことが、体に染み込んでいったようにも思うのです。
もひとつ体を温めてくれたのが、手袋で作るうさぎさん。
ピンクの手袋はピンクのうさぎさん。
赤い手袋ならあかーいうさぎさん。
学校に行く道すがら友だち同士うさぎさんを作って、お話ししたものです。
「あら、お耳が違う色でかわいいわねぇ」「ありがと、新しいお洋服なのよ」なーんてね。
そんなことしていると段々体がポッポとしてくるの。
ちょっとくらい寒くったって、ピョンピョコ跳ねてやりすごした。
・・・冬っていうのをちゃんと知ってた。ちゃんと味わっていた時代。
この絵本を子どもたちに読んでいたらね、モヘアの入ったまっ白い手袋を買ってもらったときのことを、ヒョイと思い出しました。
…「わたしの白うさぎさん、フワフワなのよ!」って。
ほんとにうれしくってスリスリしたこと。
…すぐ、ドロンコうさぎになっちゃったけどね。
(2008年1月掲載)
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